ナツツバキ(夏椿)
ナツツバキ(夏椿)
○ツバキ科ナツツバキ属 / 落葉高木 / 雌雄同株 / 日なた~半日陰
夏の始まりに椿に似た花を咲かせることからこの名がある。別名を沙羅の木(シャラノキ)というが、これは沙羅双樹からきている。「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす」平家物語の冒頭に登場するこの沙羅双樹はお釈迦様が入滅の際に時ならぬ花を咲かせたという伝説があり、仏教においては悟りを開いた時の菩提樹と生まれた時の無憂樹とともに三聖木のひとつに数えられている。
本来はインド原産のフタバガキ科の常緑高木のサラソウジュをさすが、日本の気候では育たないため日本での沙羅双樹にはナツツバキが当てられたか、間違えた認識がそのまま定着したとされている。日本の寺院にナツツバキの植栽があるのはこのためで、菩提樹も同じ理由でクワ科のインドボダイジュの代わりにシナノキ科のボダイジュが植えられている。
6月から7月頃に咲く白く清楚な花が椿に似るのは見た目だけではなく、散ることなく落ちるのも同じである。一日花であるナツツバキの花は朝に咲いて夕方には散ることなく落ちてしまう儚さがあり、樹上に咲いているときは葉に隠れて見えにくいため、落ちて初めて花の時を知らせるというのもまた風情で、花鳥風月の対象として盛んに詠まれ、夏椿、沙羅の木、沙羅双樹は盛夏の季語でもある。
庭木としても人気でよく植えられるものの、植える時には場所や土壌状況には注意が必要となる。冷温帯の山林内に生育するナツツバキは日あたりを必要とするものの乾燥や直射日光を嫌い肥沃な土壌を好むため、場所を見極め土壌条件を整える必要があり、西日には特に注意が必要となる。
自生する山林では他の木と混じって生育しており群生をつくる事はほとんどないとされているものの、兵庫県の有馬富士公園とささやまの森公園には群生が見られ天然記念物となっている。分布地では岩手県の大船渡市が北限とされ、本州の南西部の山地に広く分布し、四国、九州の鹿児島まで自生し、朝鮮半島の南部にも自生する。
○ナツツバキの手入れ
剪定 9月~10月 及び 2月~3月
移植、植栽 2月~3月 及び 5月~6月