ケヤキ(欅)
ケヤキ(欅)
〇ニレ科ケヤキ属 / 落葉高木 / 雌雄同株 / 日当たりを好む
ケヤキは日本の落葉樹を代表する樹木として、いたるところで目にします。山や川岸に自生するものから都市部の街路樹や公園、学校や社寺に植栽されたものや屋敷林として個人のお庭にあるものまで、広く私たちの身近で四季の移ろいを感じさせてくれます。
個人的には公園の広場など開けた平地で伸び伸びと扇状に枝を広げ、開放感と安心感を同時に与えてくれる雄大なケヤキの姿がケヤキらしさとして一番に脳裏に浮かびます。そしてもう一つ個人的な印象としては、ケヤキは落葉樹の中でもモミジやイチョウなどの秋を象徴する樹木とは違って冬を象徴する樹のように思います。秋も深まりケヤキの葉が舞い始めるとやがて冬が始まり、夏の間は葉を茂らし日陰を与えてくれた枝がついには裸になり、その枝の間からは冬の日の光が差し込み寒い冬に陽だまりを与えてくれる。大きな木だからこそ、そんな季節の移り変わりと有難味を強く実感させてくれるのだと思います。
このようなケヤキの大きさや美しさは古くから人々の心に留まり続けてきたようで、日本書紀には飛鳥寺ともいわれた法興寺にあったケヤキの大木についての記述があり、その記述にはその木の下で中大兄皇子と中臣鎌足が打毬をとおして親しくなった事や、いついつに枝が折れたなどの記述がみられるそうです。
そしてケヤキという呼び名の歴史をみてもその事が表れており、「ケヤキ」は優れた木を意味する「けやき木」からきています。その前には材木としての強さから「槻(ツキ)」とも呼ばれ、古代文学では生命力の強いもの、優れた木、美しい木などの名称の頭に漢字をあてて誉め称えたそうですが、そこでもケヤキは「斎(ユツ)」という美称で詠まれていたそうです。
現在、日本で一番大きいケヤキは山形県東根市の大ケヤキで高さが28m、幹周りが12.6m、樹齢は1500年以上とされ、天然記念物に指定されています。このほかにも大木として天然記念物に指定されているケヤキは日本全国にありますが、唯一並木として天然記念物に指定されているのが東京都府中市の馬場大門のケヤキ並木です。大國神社の参道でもあるこの道には約150本のケヤキが約500m続いています。また、同じく参道でケヤキ並木が街と美しく調和しているとして名高いのが東京の表参道です。こちらは明治神宮の参道で、ともに参道だからこそ必要な面積が確保され並木の美しさが保たれてきたと言えそうです。街路樹は美観だけでなく防災効果としても重要な存在ですがその維持管理は大きな課題でもあります。街路樹の価値や継続性について正しい知見と深い理解と高い関心をもとに立場を超えた議論や取り組みが望まれます。そして維持管理には剪定は不可欠ですが、ケヤキは太い枝や幹の途中で切り落とすと枝ぶりが損なわれるだけでなく葉っぱの性質まで変化して自然に伸ばした枝に着ける葉より大きくなる特徴があります。そうすると美観が損なわれるため、街路樹など面積の限られた場所では、あまり枝を広げず箒状に枝を伸ばすように品種改良された「むさしの1号」が植えられるケースも増えているようです。
先にも述べましたがケヤキは材木としての価値も高く、木目が緻密で狂いが少なく耐久年数も長く800~1000年ともいわれています。そのため寺院の建築材としての利用も多く、なかでも有名なのが清水寺の舞台の柱です。ここには高さ12mにも及ぶケヤキの柱が18本使われています。現在の舞台は1633年に再建されたもとありますので390年が経過している事になります。その長い間、部分的な補修のみで保たれているそうです。
またケヤキの材木としての価値は木目の美しさにもあり、建物の躯体としてでなく装飾用にも用いられ、特に幹にできる瘤の部分の木目は杢と呼ばれ珍重されています。そのほかお盆、家具、楽器、彫刻材などの用途があり、なかでも和太鼓の材料では最高級品とされています。
〇ケヤキの手入れ
剪定 5月~7月上旬 及び 11月~3月
植栽、移植 9月~11月 及び 1月、2月