アカマツ(赤松)
アカマツ(赤松)
○マツ科マツ属 / 常緑高木 / 雌雄同株 / 日当たりの良い場所を好む
アカマツは、その赤みがかった幹の色からそう呼ばれます。
同じく幹の色からの呼び名のクロマツと比べると、葉は少し短く柔らかく、色味も鮮やかな緑で見た目にもたおやかな雰囲気を伺わせます。庭木に仕立てられるとその印象は顕著で、そのため雄々しいクロマツを雄松(オマツ)、男松(オトコマツ)アカマツを雌松(メマツ)、女松(オンナマツ)と呼びます。
この二者は生育環境も共に共通してやせ地で乾燥地を好みますが、クロマツが平地や海岸に多いのに対し、アカマツは尾根や岩場に多く、時に他の樹木が育たない湿地にも生育します。
貧栄養の土壌を好むのは先駆植物の特徴とされますが、実はこの特徴と人とマツとの関わり方が全国の松原の衰退を招く一因となっている現状があるようです。
静岡の「三保の松原」と佐賀の「虹の松原」と共に日本三大松原に数えられる福井の「気比の松原」はアカマツが六割近くある全国でも珍しいアカマツの多い松原ですが、その規模は衰退をたどり、戦前と戦後ではその面積は半減しており、その要因は松原の利用の変化によるところが大きいようです。
ここでマツの人による利用について触れると、松の材木としての利用価値は高く「松は寸より棟梁の機あり」と言われれるほどで、粘りがあり丈夫な事から梁をはじめ建築材に多く使われてきました。
また、地中や水中でも腐りにくいマツ材は土木工事において古くから杭として使われてきました。
それ以外にもマツは燃料としても火力が強く、かつては薪として製塩や鍛冶屋の仕事に使われ、マツの葉は薪の焚き付けとして利用されていました。 現在でも長時間高温を必要とする備前焼などの焼き物にはマツの薪が使われています。
このようにマツが材木としてだけでなく燃料として優れている事、かつては普段の生活でも利用されていたものの、今では利用されなくなった事が松原の衰退に大きく関わっているようです。
というのも、戦時中、燃料不足に陥った際、マツの根から採れる松根油で飛行機を飛ばす計画が持ち上がり、かなりのマツが切り倒されたといいます。また人による松葉の利用もなくなると松原には落ち葉が積もるようになり、自然発芽による幼木の成長は阻害され、土壌の養分が豊富になりやせ地でなくなるにつれマツの樹勢は衰えていきました。
そこに外来性で免疫を持たないマツノザイセンチュウによる被害も重なるなどして、現在では懸命な保護活動により松原の状態を維持しているのが現状のようです。その活動で大きな意味を持つのが落ち葉かきで、これは今では絶滅危惧種に加えられたマツタケの収穫においても必要不可欠な作業となっているそうです。
最後に庭木としてのマツの利用についてふれると、ここでもまた時代の変化によりニーズは減る一方で、買い手がつかない事から庭木としての生産も減っているといいます。それは樹木管理する機会の減少にもつながり、どちらの現場にとっても技術や文化の伝承が課題ともいえそうです。
○アカマツの手入れ
剪定 11~2月 及び 5~7月
みどり摘み(新芽が柔らかいうちに摘み取る作業) 5月中旬から6月上旬
移植、植栽 2、3月 及び 5、6月