和みの庭
今回リガーデン工事をご依頼いただいたこちらのお庭は敷地の北側に位置し、かつての住宅の増築で削られた庭の残された一画として建物の裏にあたる場所にあり、どちらかというとバックヤード的な役割の大きい場所でした。
今回このお庭をリガーデンするにあたってはそのバックヤードとしての役割も大切にしつつ、より使いやすく整備するとともに、風景づくりにより心が和み落ち着く空間となるよう努めたいと思い、まずはお施主様からお庭について色々とお話を聞かせていただきました。
そのお話の中でリガーデンするにあたってポイントとなる点が三つありました。まず、お母様がお花が好きだけど今のお庭では楽しめないと諦めているという事。次にお母様にとって毎朝お庭に出て池の様子や植物の様子を眺めるのが日課だという事。最後にお母様が不要になった培養土などを山にしてご自身で土いじりを楽しんでらっしゃるという事です。
この三つのポイントそれぞれに対応しつつ今回のリガーデンを進めることにしました。
一つ目のポイントであるお花を楽しめるようにするという点で私からはウッドフェンスをご提案させてもらいました。そこにハンギングバスケットでお花を楽しんでいただくというのが狙いです。
それと同時に現状として庭全体を暗い印象にしてしまっている万年塀を隠し木材で囲い直す事でお庭の印象も明るく安心感のあるものになります。
そして二つ目のポイントに対しては動線をつくるという事と休息の場を設ける事を考えました。
ここでの動線は飛び石が一番適していると思い、お母様にも安心して歩いていただけるように地面との段差や間隔に細心の注意を払うと同時に、野趣のある景となるように石の配置と大きさも工夫しました。そして誘導した先に切り株を利用して作った椅子を用意しました。
このお庭には根のついたままの切り株があり、取り除くよりも景として活用したいと感じ、その他にもあった三つの切り株を加工して椅子を作ったのです。中には朽ちかけたものもあり、それは着生ランの鉢にとして活用しました。
そして三つ目のポイントの土いじりを楽しんでいる場所に対しては、その用途のまま見た目にも悪くない場所づくりをしようと竹垣の技術を応用して土をストックできる堆積場を作ったのです。竹垣のような見た目が風景にもなり、実用性と景を両立させました。さらにこの竹は取り換えが簡単にできる仕組みになっているのでその後の維持管理も問題ありません。
私は庭づくりはその場をよく見てより良く整える事だと常々思っています。そうする事でその場にふさわしい風景がおのずと出来上がりますし、そうして出来上がっていく幾層のも風景こそが人の心を和ませる空間として深みを増すのだと思います。
今回のリガーデン工事ではお施主様のご希望のもとそういった考えを実行でき、お施主様にもご満足いただけた事が私にとってもこの上ない喜びとなりました。
お庭は住環境の中でも自然環境と密接に繋がった個性あふれる空間です。今後ともそれぞれの個性を活かし、環境を整え、人の喜びに繋げる事に尽力していきたいと思います。